中央区の八重洲にある出版社に、入稿の原稿を届ける日だった。編集長にその旨を電話したら「地下鉄は乗れないよ。別な方法で届けてね」なんて変な応答だった。
いつも、渋谷から地下鉄・銀座線で銀座へ。日比谷線に乗り換えて八丁堀駅まで、ってのが決まりのルートなんだけど、訳わかんないまんまバイクで運ぶことにした。
渋谷~青山通り~三宅坂~祝田橋~皇居前広場~鍛冶橋通り~八丁堀。その間、事件らしい様子は何も感じなかった。
出版社に着いて編集長の話を聞くと、それでもはっきりとした内容じゃなかった。「なんでか地下鉄が動いてないようだ」くらいの話。
同んなじルートで渋谷に戻ったけど、TVニュースも、なんだかはっきりしない内容の時間が過ぎてたな。
そのうち社員のひとりが「これ、サリンじゃないか?」と言いだした。「ほら、あの松本で事件があったでしょ。あれあれ」。
サリン‥‥我っちも初めて言葉にしてみたけど、ニュースも段々と具体的な内容になっていった。恐ろしい~。よくぞバイクのルートで霞が関とか築地を避けてたもんだ。
あれから23年。オウム真理教の7人に死刑執行。残り6人の死刑囚も、平成年間に執行されるだろう、って話だ。
怖い、こわい、一つの時代が終わる。