5年余りの博多生活を切り上げて東京に戻ったんが、そろそろ26歳になろうとする頃だった。親父とお袋が住む下町の家には住まず、祐天寺近くのアパートを借りたんだった。ひと月ほど過ぎた頃、ラッキーなことに一部上場の活気ある会社の採用試験に受かったんで、生活の心配も無く新しい仕事に集中できた。
そんな中、一人でもよさそうな飲み屋を物色してたけど、自由が丘に一軒の店を見つけた。そこで飲んだ日本酒「新政」がとっても旨くて、5~6回は行っただろうか。カウンターだけの奥へ細長い店だったけども、カウンターには、店の入り口近くに四斗樽が据えてあって、下の注ぎ口からコップに受けたのを呑んでたんだね。こうしてこの店に出入りしたその間は、2年ほどにわたる。店の名は忘れたけど「このたびの旅」シリーズを書くにあたって、きょう、ン十年ぶりの自由が丘に降り立ったんだ。
ホームからは昔、富士山が見えてたけど、もう今じゃ無理なんだろね
そうこうしてるうちに祐天寺駅近くのスナック喫茶に出入りするようになって、友人もできた。別な飲み屋にも数人で行くようにもなった。自由が丘のあの店には、だんだんと足が遠のいていった。そうしてるうちに、数人で賑やかに飲んでると、ふと、あの店、あの「新政」の味が懐かしく、大事に思えてきたんだった。
数年経つうちに「新政」の素性を知りたくなっていた。だんだんと蔵元を訪ねてみたいなあ~、てな思いも生まれだしてた。だけどそのキッカケがつくれない。東京の会社でも仕事で出張はあって、軽井沢、北陸、美ヶ原、北海道西部、えびの高原などには行くけれど、東北地方にはなぜか縁がなかった。そんな訳で「新政」詣りも、忘れたり思いだしたりの繰り返しで、40数年が過ぎていたんだった。
今は一応のところ自由の身だ。この10連休は、あらためて「新政」詣りに絶好のチャンスじゃないのか? そして、ソロキャンプも前のバイクを乗りつぶしてしまってからは3年半のブランクが続いてる。この際、中古でイイからバイクを求めてキャンプがてら行こうじゃないか! 初の東北訪問だ。幸せな思い立ちだった♪
キャンプ道具をリュックに詰めて、いざ!