ついこの前のソロキャンプで感じ取ったこと、ふたつ三つくらいを、皆さんにも共感してもらいたくて書くことにしました。
地図を見てくれたお人ならスグに解ることだけど、洲崎(すのさき)ってのは南房総の突端からひとり、西側の東京湾に向けてせり出してる。列島の南岸を登ってきた黒潮は、館山湾の海水を吸い出すようにして、洲崎をかすめて太平洋に送りだす。そこは急流で名高い海域なんだ。
黒潮は暖流。その温ったかさは、明け方になってもこの地方に霜を降ろすことはなくて、地面も草木も濡れてることはないんだ。キャンプを終えて帰る日の朝、たたむテントが濡れてないってのはホントに助かる。今回も黒潮のその恩恵をありがたく思ったんだった。この霜なしのことは、南房総の花の栽培にうってつけで、産する花卉の9割ほどは東京・大田区の青果市場に送られてるそうだ。
温ったかい海が目の前にあって、背後はかなりの面積を持つ千葉県の土地。今回、天気も良かったんで、陸地のほうは昼間の日照でぐんぐん温度が上がってたはず。目の前の海だって太陽熱を吸収して温ったまっているはずだけども、陸地=地面は温ったまりやすく冷めやすい。反対に海水は温ったまりにくく冷めにくい。
空気は温度の低いところから高いところに向けて流れるから、昼間の空気は海から陸に向かって移動する。これ海風。そして夕方、4時半か5時ころから1時間ほどの無風状態になる。夕凪ぎという。これは海と陸の温度が拮抗してる時間帯だね。その後、空気は陸から海に向かって移動を始める。陸風だ。海ぎわでのキャンプでこそ味わえる、嬉しい時間帯なんだよ。
テントを張ったすぐ横は、草ぼうぼうだけども一応は農道らしい。軽トラックで母娘がやってきて「この向こうに畑が一枚あるもんでね」と、そろそろと走って行った。昼をかなり過ぎたころ、帰って行く母娘とちょこっとおしゃべり。娘さんは館山在住だそうで子持ちの40歳くらい。農道の周りに生えてる野草を指差して「これ、食べられるよ」と。
教えられた草の名は忘れちまったけど、キャンプ最終日の帰り際ギリギリに、教えられたとおりに草の穂先を摘んで、両手のひらにいっぱいの量を摘んで帰った。帰って翌日、これも教えられたとおりに、まず水洗いする。そしてサッと湯がく。再び水洗いする。水気を切ったら、長さ6~8センチほどの穂先を半分の長さに切って、酢味噌和えで食した。かすかな苦みがあって、でも新鮮な歯ごたえもあってとっても幸せな食感を覚えたんだった。
「道草を食う俳優」として名高い岡本信人さんの心境、ここにあり! ってとこだった。
おしまい
10/13 南房の花卉出荷先は、築地じゃなくて大田市場でした。訂正済み。