月に1回、薬をもらいに原宿まで出かける。かかりつけの医者は二代目になってからでも20年近くになる。おかげで我っちの健康はまずまず大丈夫みたいだ。
外来の人も少なかったんで、ちっとばかし先生と話をしてから渋谷に向かったよ。
渋谷も変わったね。いや、今、変わろうともがいてる最中かな。
つい昔々のことを思い出すね。
あれは、我っちの博多時代、寮のＴＶで見たんだから渋谷のどのあたりかは見当がついた。坂道の途中にある銃砲店に18～9ほどの少年が立てこもり、防弾チョッキなんぞで身を固めた警官隊と銃撃戦をくりひろげた。ライフルの弾は豊富に在庫があったんだろうし、かなりの打ち合いだったようだ。
昭和43年、博多を切り上げて東京に舞い戻った我っちは、興味本位で目星をつけてたその場所を歩いてみた。ちっこい銃砲店だった。市街戦の様相だったはずなのに、ものすごい数の野次馬は、すぐ近くを取り囲んでたそうだ。結末はどうなったのか、知らないまんまだ。
それから3～4年経ってたかな、新しくできた東京仲間と「食おう会」てな、今で言うならグルメの会みたいなもんを作って、月に１回、主に都内のあちこちの店を食い巡ってた。その一つが、先の銃撃戦があった銃砲店の坂道を下って右の路地にあった
“激辛カレー”の店「オスン」ってとこ。以後、他の友人とも行ったりした店だけど、アフリカのどっかの国のカレーらしく、かなり有名な店なことが分かった。よく、蕎麦屋とか餃子店にある大食いランキングみたいなのが張り出してあり、また有名人の色紙もいっぱい掲げてあったな。たしかここじゃ“何杯食った”なんてんじゃなくて“どれだけ辛いのを食った”てのが褒章モンだったようだ。
きょうもそうだけど、その路地は、もう20年も歩いたことないから、「オスン」があるかどうかは分かんない。いや、ずっと昔に「あ、もう無いんだな」って思ったことがあるようにも思うけど‥‥。
我っちもネ、昔のことがよく蘇ってくる歳だよ。